[ODP-211] Enhanced Carbapenem Resistance through Multimerization of Plasmids Carrying Carbapenemase Genes
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)はカルバペネム系抗菌薬を含む様々な抗菌薬に耐性を示し,使用可能な抗菌薬が限定されるため臨床上深刻な問題となっている。また,CREの地球規模での拡散と共に,カルバペネムヘテロ耐性菌の拡散も大きな問題となっている。カルバペネムヘテロ耐性菌による感染症では,薬剤感受性結果に則って抗菌薬治療を行っても,耐性度上昇により治療に失敗する危険性がある。カルバペネム耐性は主にプラスミド上にコードされたカルバペネマーゼ遺伝子に依存するが,Porin欠損やカルバペネマーゼ遺伝子の縦列増幅により耐性度が増強(ヘテロ化)することが報告されている。我々は北大阪地域におけるCREサーベイランスで得られた菌株の中から,S1-PFGE及びblaIMP-6遺伝子をプローブとしたサザンハイブリダイゼーションにおいてラダー状のバンドを呈する大腸菌を複数分離した。これらの株では,recA遺伝子により,blaIMP-6搭載プラスミド上のIS91 family transposase領域がhomologous recombinationを起こし,プラスミドが多量体化し,分子サイズを異にするプラスミド群が生じることを示した。これに伴い,菌体内でのblaIMP-6コピー数の増加及び転写量の増加が起こり,カルバペネムに対する耐性度が上昇した。興味深いことに,メロペネム添加下培養により,プラスミド多量体化はさらに亢進し,容易にカルバペネム耐性が増強されることを見出した。このメカニズムが抗菌薬の届きにくい細菌感染症において作用すると,治療途中で耐性度が上昇することにより,治療が困難になる可能性があり,注意が必要である。