第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

8 微生物の応用

[ODP8A] a. 微生物・微生物の産物の応用

[ODP-228] 細菌性コラゲナーゼ由来コラーゲン・アンカーの構造活性相関と神経再生への応用

○松下 治1,美間 健彦1,後藤 和義1,山本 由弥子1,Perry Caviness2,Joshua Sakon2,内田 健太郎3,藤巻 寿子3,井上 玄3,高相 晶士3 (1岡山大・院医歯薬・病原細菌学,2米アーカンソー大・化学生化学,3北里大・医・整形外科)

【コラーゲン・アンカーの解析】Clostridium属菌が産生するコラゲナーゼは,触媒モジュールのC末端側にpolycystic kidney disease様ドメイン(PKD)とコラーゲン結合ドメイン(CBD)を有する。C. histolyticum ColH酵素では,PKDはCBDの基質結合能を増強した。このC末端断片とミニ・コラーゲンの複合体の構造をX線小角散乱により解析したところ,CBDはミニ・コラーゲンに結合し,PKDは隣接すると想定されるコラーゲン分子への結合に最適な位置に見いだされた。また,PKDは基質コラーゲン分子のC末端方向に向いていた。PKDの分子表面には芳香族アミノ酸残基が集族して露出していたので,これらの残基の変異体を用いて結合モデルの妥当性を検討している。
【神経欠損治療剤の開発】塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は,シュワン細胞の増殖を誘導して神経欠損修復を促進することが知られている。bFGFの持続的な効果を期待してbFGFにコラーゲン・アンカーPKD-CBDを融合したコラーゲン結合型bFGF (CB-bFGF) を作製した。内面にコラーゲンが充填され,外面にコラーゲンが塗布したポリグリコール酸製の筒状基剤を,CB-bFGFまたはbFGF溶液に浸漬した後,坐骨神経欠損(15 mm)モデルラットに移植した。CB-bFGF群ではbFGF群,PBS群に比し,早期(4週間後)に歩行の改善を認めた。8週間後には,CB-bFGF群でbFGF群,PBS群に比して組織学的により太い神経束を認めた。また,CB-bFGF群では有意に多くの個体で有髄神経を認めた。