[ODP-230] The biological effect of Monascus spp.-extracts on cholera toxin production
紅麹菌(Monascus属)は,東南アジアおよび沖縄県において発酵食品や天然着色料に活用される食用糸状菌である。近年,紅麹菌発酵抽出物が多様な生物活性を示すことが示されている。コレラ菌は経口的に人に感染し,宿主腸粘膜細胞表面に接着した後,増殖してコレラ毒素(CTx)を産生することで致死的な下痢症を誘発する。今回,我々は教室所有の紅麹菌ライブラリーより選定した紅麹菌発酵抽出物(標品)を用いて,コレラ菌のCTx産生に及ぼす影響について検討した。紅麹菌を蒸米に植菌し,30℃で14日間静置培養して紅麹を得た。紅麹をヘキサン処理し,各有機溶媒で得られた抽出物を標品として用いた。前培養したVibrio cholerae O1生物型El Tor N16961株を,標品を最終濃度1%に含むAKI培地に105 cfu/ml程度接種してAKI-SW法でCTx産生を誘導した。標品の溶解に用いたエタノールを最終濃度1%に含むAKI培地を溶媒対照としてCTx産生量を比較した。標品存在下でCTx産生を誘導したとき,溶媒対照と比較してCTx産生に標品濃度依存的な変化が観察された。このとき,コレラ菌の生菌数には大きな変化は認められなかった。CTx産生に対する標品の影響は,他の血清群または生物型コレラ菌に対しても同様に認められた。現在,CTx産生に係る遺伝子の発現解析を行っている。