[ODP-234] 難培養性細菌の全ゲノムクローニング
環境中の微生物のうち99%以上は培養困難な難培養性微生物と言われており,培養を介した分子生物学研究ではこれらの微生物の性質に迫ることは困難である。昨今の培養を介さないメタゲノム解析手法の確立により,膨大な数の培養不可能な細菌の遺伝子情報が手に入るようになってきた。これら遺伝子の機能は,配列比較から予測することは可能である一方,遺伝子のノックアウトや過剰発現ができないため,その遺伝子の機能についての確実な証明はほとんどされていないのが現状である。近年,米ベンター研究所によって細菌ゲノムを丸ごと酵母にクローニングする手法が確立され,酵母で利用可能な塩基配列の改変技術を用いて,難培養性細菌の遺伝子についても任意の改変をすることが理論上,可能となった。本研究では,難培養性細菌の遺伝子の機能を解明する第一歩として,ゲノムサイズが比較的小さい昆虫共生細菌についての全ゲノムクローニングを試みた。共生器官から抽出された細菌ゲノムDNAを,隣り合う断片同士が数百bp程度重複するように,Long-PCRにて12または24 kbpずつ十数個に断片化した。これらのPCR増幅断片を精製し,酵母人工染色体ベクターと共に酵母スフェロプラストに導入し,相同組換えを利用してゲノム断片がアッセンブリーされた形質転換体酵母を取得した。各断片の結合部分にまたがるようにプライマーを設計し,Junction PCRによって各断片のアッセンブリーの有無を確認した。その結果,予測されるすべての繋ぎ目が検出され,すべてのゲノム断片が1つの環状DNAへと構築されたクローンを取得することに成功した。