[S10-1] Understanding of bacterial virulence by experimental evolution
病原性をもたない細菌が病原性に関わる生物機能を獲得し,病原性細菌として進化する分子メカニズムは全く明らかになっていない。本研究では,カイコを用いた感染モデルにおいて病原性細菌の進化実験を行い,細菌が自身の遺伝子を変異させ病原性を獲得する分子機構の解明を試みた。
大腸菌を変異原処理し,カイコへ感染させ,感染死したカイコから大腸菌を分離する操作を行った。この操作を21回繰り返したところ,親株に比べて500倍に病原性が上昇した大腸菌変異株が得られた。全ゲノムを解析した結果,500倍に病原性が上昇した大腸菌変異株においては,200 個以上の遺伝子変異が存在することが明らかとなった。大腸菌変異株の変異部位の解析により,大腸菌の高病原性化を導く遺伝子変異として,LPSトランスポーターのアミノ酸置換変異とペリプラズムグルカン合成酵素の欠損を見出した。これらの遺伝子変異はいずれも,宿主の抗菌ペプチドに対する大腸菌の耐性化を導くことが明らかとなった。
以上の結果は,カイコ感染モデルを用いた実験的進化系により,遺伝子変異の蓄積による細菌の病原性獲得プロセスを解析できることを示唆している。また,抗菌ペプチドに対する耐性化が細菌の病原性獲得の一要因であると考えられる。
大腸菌を変異原処理し,カイコへ感染させ,感染死したカイコから大腸菌を分離する操作を行った。この操作を21回繰り返したところ,親株に比べて500倍に病原性が上昇した大腸菌変異株が得られた。全ゲノムを解析した結果,500倍に病原性が上昇した大腸菌変異株においては,200 個以上の遺伝子変異が存在することが明らかとなった。大腸菌変異株の変異部位の解析により,大腸菌の高病原性化を導く遺伝子変異として,LPSトランスポーターのアミノ酸置換変異とペリプラズムグルカン合成酵素の欠損を見出した。これらの遺伝子変異はいずれも,宿主の抗菌ペプチドに対する大腸菌の耐性化を導くことが明らかとなった。
以上の結果は,カイコ感染モデルを用いた実験的進化系により,遺伝子変異の蓄積による細菌の病原性獲得プロセスを解析できることを示唆している。また,抗菌ペプチドに対する耐性化が細菌の病原性獲得の一要因であると考えられる。