第94回日本細菌学会総会

講演情報

シンポジウム

[S6] 細胞外マトリックスを認識する接着因子~病原細菌の感染戦略について~

2021年3月24日(水) 09:15 〜 11:45 チャンネル4

コンビーナー:松永 望(岡山理科大学)

[S6-5] ウェルシュ菌フィブロネクチン結合タンパク質の探求

○松永 望 (岡山理科大学理学部臨床生命科学科)

Clostridium perfringens(ウェルシュ菌)は主に土壌に生息するグラム陽性有芽胞桿菌であり,事故等で生じた創傷部位に侵入し,不可逆的な組織破壊をもたらすガス壊疽を引き起こす。ウェルシュ菌はヒトのフィブロネクチン(Fn)に結合し,さらにFnを介してコラーゲンに結合する特徴を有する。Fnは12個のType I module,2個のType II module,および15-17個のType III moduleからなる細胞外マトリックスタンパク質であり,創傷治癒過程の初期段階や細胞の接着・遊走など重要な役割を有している。Staphylococcus aureusStreptococcus pyogenesをはじめとする多くの菌体では,Fn Type I module 1-5番目と結合するが,ウェルシュ菌はFn Type III module 9-10番目に結合する。現在までに,複数のウェルシュ菌のFn結合タンパク質(Fbps)が同定された。それらには,FbpA,FbpB,FbpC,FbpD,解糖系酵素であるglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH) および自己溶解酵素Autolysinが含まれる。
本シンポジウムでは,これらのFbpsがウェルシュ菌菌体とFnとの結合にどのように関与しているかについて得られた知見をもとに紹介する。ウェルシュ菌の宿主組織創傷部位への定着には,ウェルシュ菌Fbpsが深く関与していると考えられた。