[S7-1] 腸管病原菌による宿主細胞死クロストーク制御機構の解明
腸管病原菌が感染を成立させるためには,宿主の様々な生体防御反応と対峙する必要がある。宿主は感染初期に菌の侵入を感知し,炎症や細胞死といった自然免疫応答を感染防御の手段として誘導することで,感染を効果的に阻止する。特に細胞死誘導は,その形態や誘導機構により様々なタイプ(apoptosis,necrosis,pyroptosis,necroptosis等)に分類されるが,感染により損傷を受けた細胞を病原細菌ごと取り除くことで感染拡大を阻止するため,感染防御機構として効果的である。これに対し,多くの腸管病原菌は感染のあらゆる局面でIII型分泌装置より複数の病原性タンパク(エフェクター)を宿主細胞内に注入し,宿主細胞機能を制御することで自然免疫応答を抑制し,感染を成立させる。
腸管上皮細胞を感染の場とする腸管病原菌感染では,感染後期に至るまで細胞死誘導は認められない。この結果は腸管病原菌が感染の場を保持するための感染戦略として,エフェクター分泌により宿主細胞死を抑制していることを示唆している。さらに興味深いことに,宿主側も腸管病原菌による細胞死抑制を感知し,別の細胞死をバックアップとして発動する細胞死クロストーク機構により感染拡大を妨げていることが明らかとなった。
本研究では,宿主による細胞死クロストーク発動機構とそれに対する腸管病原菌の感染戦略に関する最近の知見を紹介する。
腸管上皮細胞を感染の場とする腸管病原菌感染では,感染後期に至るまで細胞死誘導は認められない。この結果は腸管病原菌が感染の場を保持するための感染戦略として,エフェクター分泌により宿主細胞死を抑制していることを示唆している。さらに興味深いことに,宿主側も腸管病原菌による細胞死抑制を感知し,別の細胞死をバックアップとして発動する細胞死クロストーク機構により感染拡大を妨げていることが明らかとなった。
本研究では,宿主による細胞死クロストーク発動機構とそれに対する腸管病原菌の感染戦略に関する最近の知見を紹介する。