[S7-3] ESCRT機構によるA群レンサ球菌感染制御
宿主細胞は病原性細菌の様々な感染過程を認識することで,感染制御経路を活性化させ,生体を防御する。病原性細菌の多くはエンドサイトーシスを介して宿主細胞へ侵入後,エンドソーム膜に膜孔を形成したり分泌装置を膜に挿入することでエフェクターを宿主細胞質へ分泌し,エンドソーム経路を制御することで細胞内での生存を図る。近年,ESCRT(endosomal sorting complex required for transport)機構がこうした細菌によるエンドソーム膜の傷害を認識し,この膜傷害を修復することで,生体防御に寄与することが明らかとなってきた。今回我々は,ヒトの病原性細菌の一つであるA群レンサ球菌(Group A Streptococcus)の細胞内動態におけるESCRT機構の関与を検証した。A群レンサ球菌はヒトに上気道炎や劇症型感染症を引き起こす細菌で,ヒトの上皮細胞やマクロファージ等の様々な細胞へ侵入する。我々はまず,細菌感染時のエンドソーム膜修復機構に重要なRab8AとLRRK2のノックアウト(KO),ノックダウン(KD)解析を行った。その結果,Rab8AとLRRK2はオートファジーを介した菌の排除に関与していることが示唆された。また,Rab8A-KO細胞では菌を取り囲むゼノファゴソーム様構造が肥大化し,内部で菌が増殖している可能性が示唆された。また,Rab8A依存的に,菌を取り囲むゼノファゴソーム様構造にESCRT複合体因子が局在していることが明らかとなった。以上の結果から,Rab8A/LRRK2を介したESCRT機構が,A群レンサ球菌を殺菌するオートファジーに関与していることが示唆された。