[S7-5] The host autophagy during pneumococcal infection
肺炎球菌はグラム陽性の双球菌で,高齢者や小児では致死率の高い侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を引き起こす。IPDにおける菌の侵入門戸は小児では鼻咽頭上皮,高齢者では肺胞上皮であり,細胞表面に付着した肺炎球菌の一部はCbpA-pIgR結合を介してエンドサイトーシスにより細胞内に侵入し,侵襲性感染を引き起こす。そこで,我々は,細菌を選択的に認識するオートファジー(ゼノファジー)に着目し解析を行った結果,感染初期にはFIP200,Atg14,ROS非依存的,Atg16L1,NDP52依存的なノンカノニカルオートファジー(PcLV)が一過性に誘導され,感染2時間後にはPcLVと入れ替わるように,FIP200,Atg14,p62,K63型Ub,NEDD4-1に依存したカノニカルなオートファジー(PcAV)が誘導されること,さらにPcAV形成にはPcLVが事前に形成されることが必要であることが明らかになった。さらに,これら一連のオートファジーは膜孔形成毒素ニューモリシンに依存していた。次に,肺炎球菌の保有する病原因子が宿主細胞のオートファジーを制御する可能性を検討した結果,肺炎球菌の菌体表層に存在するCbpC(Choline-binding protein C)がAtg14-CbpC-p62複合体を形成し,それがAtg14の選択的分解,ひいてはAtg14の枯渇を招き,肺炎球菌に対するゼノファジー活性を低下させることを見いだした。この結果は,肺炎球菌が病原因子であるCbpCをおとりにして宿主のオートファジー機構をハイジャックし「オートファジーを燃料切れにさせる」という,巧みな細胞内生存戦略を持つことを意味していた。本シンポジウムではこれら肺炎球菌に対する宿主オートファジー認識機構と菌によるその制御機構について論じたいと思う。