[S9-3] Dysbiosis in immune disorders
近年,腸内細菌叢の割合の変化(dysbiosis)が様々な疾患の病態に深く関わっていることが明らかになってきている。クローン病や潰瘍性大腸炎に代表される炎症性腸疾患の患者では,dysbiosisが認められ,マウス腸管炎症モデルでは,腸内細菌依存性に腸管炎症が発症すること,dysbiosisが腸管炎症を悪化させることも報告されている。このように,炎症性腸疾患の病態に腸内細菌叢が深く関与している。また,消化管以外の組織の免疫疾患の病態にも腸内細菌叢が関与していることが報告されている。関節リウマチや多発性硬化症のマウスモデルでは,腸内細菌叢を排除することにより疾患の発症が抑えられることから,関節や脳組織の免疫疾患の病態への腸内細菌叢の関与が示唆されている。また,実際に関節リウマチや多発性硬化症の患者でも,dysbiosisが報告されている。我々の研究でも,日本の早期の関節リウマチの患者で,プレボテラ属細菌が優位となるdysbiosisが認められた。さらに,ヒト腸内細菌叢を関節炎モデルマウスに移植させる実験から,関節リウマチ患者で認められるdysbiosisが関節炎の発症に深く関わっていることが示唆された。炎症性腸疾患や関節リウマチを中心に,腸内細菌叢の免疫疾患の病態への関与について議論したい。