[S9-4] Dysbiosis of intestinal microbiota and application of synbiotics
外科手術や集中治療室,がん化学療法施行といった重症病態の患者においては,腸管は侵襲の重要な標的臓器であり,極めて重篤なdysbiosisとdysbiosisに伴うBacterial translocation(BT)による感染症が,患者の予後を左右する大きな問題として指摘されている。臨床では,プロバイオティクスとプレバイオティクスを併用する,シンバイオティクスという概念が定着してきている。プロバイオティクス単独での使用に比べより強い効果が期待できることから,特に重症病態の患者においては感染症を制御する手段として注目されており,特定のシンバイオティクスにおいては,消化器外科や救命救急の周術期患者を対象にした複数の臨床研究が実施され,感染性合併症に対する予防効果や栄養管理における有用性が明らかにされている。また近年では,手術患者のみならず,がん化学療法施行下のがん患者において有害事象に対する軽減作用(発熱性好中球減少症や重篤な下痢の減少)が認められており,適応症例が拡大されてきている。今後,プロバイオティクス・シンバイオティクスの基礎研究および臨床研究の情報を系統化し,科学的なデータをもとに適切な利用方法を確立していくことが,医療の現場で今迄以上にプロバイオティクス・シンバイオティクスが普及されるうえで重要なポイントであると考えられる。