[SW1] 臨床検査室と基礎研究室のコラボレーションで未来に繋ぐ
1980年代後半,筆者が感染症検査に携わるようになった当時,細菌検査室または微生物検査室と呼称された設備で細菌培養や一部の真菌培養を中心に臨床材料から感染症の起炎菌を検索していた。限られた分離培地を用いて検出された分離菌は,限られた生化学的性状の確認培地や抗血清などを用いて同定が行われ,質量分析装置が用いられている現在からは考えにくい検査法を実施し,その精度は疑わしいものがあった。もちろん,当時の分類や感染症の状況ではそれで良かったのかもしれない。また,薬剤感受性検査はトリディスクや,センシディスクなどの濾紙ディスクを用いたディスク拡散法によって1+,2+,3+といった結果や感性,中間,耐性といった表現に留まっていた。現状では微量液体希釈法によって最小発育阻止濃度が測定され,一部の耐性菌が検出されるなど,この30年間で感染症検査は大きく変貌を遂げてきた。
近年の新興・再興感染症の多くは臨床検査室では検査できないものが多い。なぜなら医療における感染症検査は診療報酬という枠の中で,一定の型に嵌められた検査を実施しており,その型や枠から逸脱するような運用は困難なのである。すなわち,同定,耐性菌検出,毒素検出などにおいてはキット化されていないものは利用できず,応用が利かないのである。結果,未知の細菌やウイルス,その他の感染症事象が発生したとして,その異常に気付いても先に検索を進めることができず,有耶無耶になっているのが現状である。
本講演では臨床微生物検査室と基礎分野の研究室とのコラボレーションによって繋げることのできる未来を考えてみたい。
近年の新興・再興感染症の多くは臨床検査室では検査できないものが多い。なぜなら医療における感染症検査は診療報酬という枠の中で,一定の型に嵌められた検査を実施しており,その型や枠から逸脱するような運用は困難なのである。すなわち,同定,耐性菌検出,毒素検出などにおいてはキット化されていないものは利用できず,応用が利かないのである。結果,未知の細菌やウイルス,その他の感染症事象が発生したとして,その異常に気付いても先に検索を進めることができず,有耶無耶になっているのが現状である。
本講演では臨床微生物検査室と基礎分野の研究室とのコラボレーションによって繋げることのできる未来を考えてみたい。