第94回日本細菌学会総会

講演情報

ワークショップ

[WS10] 選抜ワークショップ:抗菌性物質・薬剤耐性

2021年3月25日(木) 12:45 〜 14:45 チャンネル4

コンビーナー:中山 浩伸(鈴鹿医療科学大学),西野 邦彦(大阪大学 産業科学研究所)

[WS10-5/ODP-209] 国内の市販鶏肉におけるESBL産生大腸菌の定性・定量評価

○山本 詩織,中山 達哉,町田 李香,朝倉 宏 (国立衛研・食品衛生管理)

基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌は,第三世代セフェム系抗菌薬を分解する院内感染症起因菌の一つである。我々は第90回本総会にて市販鶏肉製品でのESBL産生大腸菌の高率汚染を報告した。食品のリスク評価を行う上で定量的成績が求められる国際動向を踏まえ,本研究では国内に流通する鶏肉製品でのESBL産生大腸菌の定量的汚染実態を検討した。市販鶏肉製品計205検体を供試検体とし,緩衝ペプトン培地を用いて乳剤を作成した後,クロモアガーESBL培地への直接塗抹により定量評価を行った。併せて,同乳剤にセフォタキシム(終濃度1 µg/ml)を添加し増菌培養後,同選択分離培地を用いてESBL産生大腸菌を単離した(定性試験)。得られた分離菌株は,薬剤感受性試験,ESBL産生遺伝子型別,Incompatibility plasmid型別に供した。ESBL産生大腸菌は205検体中120検体(58.5%)で認められ,前回の結果と同様に高い汚染率を示すことが確認された。定量成績は,15検体が100CFU/g以上(最大1,150CFU/g),20検体が25~99CFU/gを示し,170検体が検出限界未満(25CFU/g未満)であった。計115菌株のうち,106株(92.2%)はβラクタム系抗菌薬以外にも耐性を示した。ESBL産生遺伝子型はCTX-M-1及び2型が各50株,36株で認められ,優勢であった。一方,CTX-M-8又は9型は4株,11株と少数認められた。CTX-M-1,2,又は8型の54株(47.0%)は,IncI1プラスミドを保有していた。以上,国内で市販される鶏肉製品の一部では高い菌数分布を示すことが確認された。また,ヒト臨床分離株で高率に認められるCTX-M-1,2,及び8型が優勢な遺伝子型として検出され,鶏肉を介したヒトへの感染経路が成立する可能性が示唆された。