The 94th Annual Meeting of Japanese Society for Bacteriology

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Workshop

[WS10] Selected from Oral Session: Antimicrobials and Drug Resistance

Thu. Mar 25, 2021 12:45 PM - 2:45 PM Channel 4

Conveners: Hironobu Nakayama (Suzuka University of Medical Science), Kunihiko Nishino (The Institute of Scientific and Industrial Research, Osaka Univ.)

[WS10-7/ODP-195] Anti-inflammatory effect of Staphylococcus aureus phage ΦMR003 on wound infection

○Tomoya Suda1, Tomoko Hanawa2, Mayuko Tanaka2, Kazuhiko Miyanaga3, Yasunori Tanjii3, Takeaki Matsuda1,4 (1Dept. Gen. Med., Sch. Med., Kyorin Univ., 2Dept. Infect. Dis., Sch. Med., Kyorin Univ., 3Dept. Lif. Sci. Tech., Tokyo Tech Univ., 4Dept. Trauma and Crit. Care., Sch. Med., Kyorin Univ.)

【目的】感染症治療にバクテリオファージを用いる「ファージ療法」では,ファージの宿主免疫系に及ぼす影響を考慮することが重要であるが,その報告は少ない。本研究ではファージによる宿主への影響を明らかにするため,マウス創傷感染モデルを用いて解析した。
【方法】黄色ブドウ球菌ファージΦMR003は丹治らが2018年に都市下水流入水から単離した。MRSAの菌株には,ΦMR003に感受性を示すKYMR116と117,および非感受性株であるKYMR58を用いた。マウス背部に皮膚切除部位を作成し,各MRSA株を接種して創傷感染モデルとした。MRSA接種から30分後にΦMR003を投与し,生菌数とIL-1β量を測定した。
【結果】感受性株であるKYMR116,117を感染させた場合,ΦMR003投与により48時間後の生菌数は約1/105まで減少した。一方,非感受性株であるKYMR58の感染48時間後の生菌数もファージ投与により約1/10まで減少した。KYMR58感染に対するΦMR003の影響を調べるため,生菌数とIL-1β量を経時的に測定した結果,ファージ投与により感染6時間後の生菌数は約1/10,24時間後は約1/100と減少したが,その後は増加に転じ48時間後には非投与群の約1/10となった。IL-1β量は,ファージ非投与群では24時間をピークに増加したが,投与群では変化がなく,24,48時間後の産生量は非投与群の約1/2であった。さらに,MRSA感染のない皮膚切除部位でもIL-1βの産生が誘導されたが,ファージ投与によりその量は有意に低下した。以上の結果から,ファージは宿主免疫系に対して抑制的に働き,溶菌以外の機構で菌数を低下させることが示唆された。ファージ療法では,宿主免疫系を介したファージの作用を考慮する必要性が考えられた。