[WS2-4] ヒト腸内からの新規微生物の分離・新種提案
近年,ヒト微生物叢の研究は,メタゲノムシーケンシングによって肥満からメンタルヘルスまで,ヒトの健康の他の側面における微生物叢の潜在的役割への関心事として拡大している。研究過程で,様々な健康と病気に関与すると考えられる多くの「鍵」となる菌種候補が導き出されているが,その多くがゲノム情報のみの菌種,あるいは既知種としても我々にとって培養経験がほとんどない菌種と言っても過言ではない。メタゲノミクスによるアプローチは,培養の煩わしさがないため多くの研究者がヒト微生物叢の研究へ参入する契機となり,特にヒト腸内微生物叢の研究のブームは今後もしばらく続くと思われる。しかし,ヒト微生物叢の研究をこれまで以上に発展させるためには,研究者は,ゲノム情報を使用して未培養細菌の潜在的な役割を単に予測するのではなく,培養によって人体から分離された新しい微生物の特性を明らかにすることを試みる必要がある。フランスの研究グループを中心に,既に複数の培養条件を用いて解析する培養手法により,これまでに培養されていなかった微生物が数多く分離されている。単離された微生物は,その分類学的研究が行われるとともに,その微生物に学名が与えられ,研究者間でその標的とする微生物に制限なくアクセスできる環境に寄託される必要がある。我々も,ヒト腸内から新規微生物を単離し,その分類学的研究を行うとともに,微生物資源の確保およびその利用の観点からバイオリソースの整備を行っている。本ワークショップでは,新規微生物の分離とともに,新種提案の現状,そしてその受け皿となっているカルチャーコレクションの重要性についても議論したい。