[WS3-2] 日本人の大規模メタゲノム解析から明らかにする腸内viromeの多様性
ヒトの腸内には多数のファージが生息しており,それらは腸内細菌叢の構造と機能と強く関わると考えられる。しかし,ファージには細菌の16S rRNA遺伝子のような共通のマーカー遺伝子が存在しないこと,ファージのリファレンスゲノムデータが不足している等の理由により,未だヒト腸内におけるファージのコミュニティ(virome)を網羅的に解析することは困難である。本発表では千人以上の日本人被験者から得られた糞便のメタゲノムデータと,新たに開発した解析パイプラインを組み合わせることで明らかにした,ヒト腸内viromeの多様性に関して報告する。得られたファージのゲノム配列には,今まで報告がないにも関わらず日本人集団に非常に豊富なファージの系統が含まれていた。また,bacteriomeとの関連解析により,制限修飾系やCRISPR-casシステム等の細菌の防御システムとviromeとの関連が明らかとなった。さらに,被験者から得た詳細なメタデータと比較することで,ヒト腸内viromeの構造と非常に強く関連する宿主因子を多数明らかにした。これら大規模解析の結果は,ヒト腸内viromeの生態系を明らかにする上で重要な基盤データとなると期待される。