第94回日本細菌学会総会

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ワークショップ

[WS5] 新たな視点から口腔内細菌を見つめる―個々の病原体から菌叢解析まで―

2021年3月24日(水) 16:00 〜 18:00 チャンネル1

コンビーナー:大原 直也(岡山大学),小松澤 均(広島大学)

[WS5-1] P. gingivalis ジンジパインによるCOX-2発現における細胞外カルシウム流入の重要性

○中山 真彰1,2,内藤 真理子3,中山 浩次3,大原 直也1,2 (1岡山大・院医歯薬・口腔微生物学,2岡山大・歯先端研セ,3長崎大・院医歯薬・口腔病原微生物学)

Porphyromonas gingivalis (Pg) は慢性歯周炎に深く関わる口腔細菌である。歯周炎ではCOX-2の発現とPGE2の産生が認められる。我々はこれまでにPgが産生するジンジパインがCOX-2発現とPGE2産生に関与し,それには細胞内カルシウム(Ca2+)濃度の増加が必要であることを示してきた。本会では,ジンジパインによるCOX-2発現における細胞内Ca2+の供給メカニズムを調べたので報告する。細胞外からの供給については細胞外Ca2+キレート剤であるEGTAを用いて調べ,細胞内貯蔵からの供給については小胞体膜状のCa2+-ATPase阻害剤であるThapsigargin(TG)を用いて調べた。これらの阻害剤でそれぞれ前処理したTHP-1細胞を用いて,Pgの感染実験を行なった。THP-1細胞に対するPg感染によるCOX-2の発現は,EGTA処理により減少し,TG処理により増加した。TG処理では細胞内Ca2+濃度が上昇することでCOX-2発現が亢進し,EGTA処理ではEGTAのCa2+キレート効果により細胞外Ca2+の減少がCOX-2の発現の減少につながったと考えられた。したがって,ジンジパインによるCOX-2発現誘導における細胞内Ca2+濃度上昇は,細胞外Ca2+の細胞内流入であることが明らかとなった。