第94回日本細菌学会総会

講演情報

ワークショップ

[WS7] 選抜ワークショップ:病原因子と生態防御(毒素・エフェクター・生理活性物質等)

2021年3月24日(水) 16:00 〜 18:00 チャンネル4

コンビーナー:西川 喜代孝(同志社大学),田端 厚之(徳島大学)

[WS7-5/ODP-131] 大腸菌由来CirAによる細胞外小胞を介したマクロファージの炎症性因子誘導

○今宮 里沙1,岡 真優子2,篠原 明莉1,堀口 安彦3 (1京都府大・生命環境・食品安全性学,2京都府大院・生命環境科・食環境安全性学,3阪大微研・分子細菌学)

ほ乳動物の細胞から分泌される細胞外小胞のエキソソームは,エンドソーム由来の膜小胞で,内包するタンパク質や核酸を介してシグナルを伝達する。また,感染した細菌の病原性因子がエキソソームから検出され,そのエキソソームによる炎症反応が報告されている。細菌感染様の発熱や炎症であっても,体内から細菌が検出されず,原因不明な病態がある。そこで我々は,細胞間隙を容易に通過できる細菌由来の微小な細胞外小胞(OMV)に着目し,大腸菌由来OMVがエキソソームを介した炎症病態に及ぼす作用について検討を開始した。Escherichia coli K-12株の培養上清から超遠心法(100,000 × g, 3 h)によりOMVを得た。OMV(10 μg/dish)存在下で9 時間,その後培地を入れ替えて9時間培養したマウスマクロファージ(Mφ)(RAW264.7;8×106 cells /dish)の培養上清から超遠心法(100,000 × g, 3 h)によりエキソソームを得た。エキソソームは,ナイーブMφに作用してiNOS及びCOX-2の発現を増大させた。次に,エキソソーム内で高頻度に検出された5種の大腸菌タンパク質の各遺伝子欠損株由来OMVを野生株OMVと比較した。その結果,cirA欠損OMV添加時にエキソソームの作用が減弱し,cirA補填により作用が回復した。さらに大腸菌の外膜に存在する膜貫通型タンパク質のCirAを,膜貫通部位と膜外部位に分けて炎症性因子誘導に重要なドメインを絞り込んだ。抗菌ペプチドの受容体であるCirAは,真核細胞に対する病原性は全く知られていない。現在,CirAによる炎症誘導メカニズムを解析中である。