[WS7-6/ODP-137] 結核菌エフェクタータンパク質によるIL-1β産生阻害の分子機序
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は,Zinc metalloprotease 1 (Zmp1) を分泌して炎症性サイトカインInterleukin-1β (IL-1β) の産生を阻害することでマクロファージ(Mφ)内での殺菌を回避する。しかしながら,Zmp1によるIL-1β産生阻害の具体的な分子機序は不明である。それを解明するため,我々は酵母two-hybridスクリーニングを行い,新規のZmp1結合タンパク質を分離した(以下,この分子をEssential Regulator of Inflammation in Macrophage,ERIMと呼ぶ)。結核菌感染によるIL-1β産生におけるERIMの役割を検証するために,CRISPR/Cas9法を用いてJ774.1マウスMφのERIM遺伝子破壊株(ERIM-KO)を作製し,結核菌ワクチン株BCGのZmp1欠損株(BCG-Δzmp1)の感染で誘導されるIL-1βの産生をELISA法で解析した。その結果,J774.1元株ではBCG-Δzmp1感染後にIL-1βの産生が誘導されたのに対してERIM-KOでは誘導されなかったことから,BCG感染によって誘導されるIL-1βの産生にはERIMが必須であることが示唆された。そこで,IL-1β産生制御におけるERIMの作用機序を明らかにするため,結核菌に対する感染防御に重要なNLRP3インフラマソームを選択的に活性化させた際のIL-1β産生,ASC凝集体の形成,ミトコンドリア(mt)ROSの産生について,それぞれELISA,蛍光免疫染色,FACS解析によって調べた。すると,J774.1元株ではIL-1β産生,ASC凝集体の形成,mtROS産生の亢進が起こるのに対し,ERIM-KOではそれらが認められなかった。以上より,Zmp1は新規NLRP3インフラマソーム制御因子ERIMに結合し,mtROS産生を抑制することでNLRP3インフラマソームの形成を阻害し,その結果IL-1βの産生を阻害すると推測される。