第94回日本細菌学会総会

講演情報

ワークショップ

[WS9] 選抜ワークショップ:病原因子と生態防御(感染モデル・寄生・免疫・ワクチン)/病原体と感染症

2021年3月25日(木) 12:45 〜 14:45 チャンネル3

コンビーナー:藤永 由佳子(金沢大学),住友 倫子(大阪大学)

[WS9-2/ODP-098] ウェルシュ菌が放出するメンブレンベシクルを介した宿主免疫誘導機構の解析

○奥田 真由1,尾花 望2,奥脇 響1,中尾 龍馬3,泉福 英信3,野村 暢彦4 (1筑波大・生命環境,2筑波大・医・TMRC,3国立感染研・細菌第一,4筑波大・生命環境系)

細菌の多くがメンブレンベシクル(MV)と呼ばれる直径20-400nmの膜小胞を産生することが報告されている。MVにはタンパク質や脂質,核酸,シグナル物質といった様々な菌体由来成分が含まれており,細菌間や細菌と宿主間相互作用などに機能する。本研究ではMVの宿主免疫誘導に注目し,病原菌ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)が産生するMVの免疫誘導機構の解明を目指した。ウェルシュ菌はMVを能動的に放出し,産生されたMVはTLR2を介して宿主自然免疫を誘導することが明らかとなっている(Obana et al. 2017. Infect Immun)。そこで,MVによる獲得免疫(抗体産生)の誘導を評価するため,ウェルシュ菌菌体またはMVをマウス鼻腔投与したところ,MV投与によってのみウェルシュ菌特異的血清IgGと粘膜分泌型IgA産生を誘導することが示された。MVに含まれるタンパク質を解析したところ,2つの推定リポタンパク質であるLipOとMalEがMV画分に濃縮されており,これらのタンパク質が免疫優勢抗原として機能することが示された。両推定リポタンパク質欠損株を作製し,これらの欠損株由来のMVをマウスに鼻腔投与しところ,野生株MVの場合と比較してウェルシュ菌特異的抗体産生誘導能が顕著に低下した。また,産生された抗体はウェルシュ菌生菌に結合活性を示すことが明らかとなった。以上より,LipOとMalEは,MVによる宿主免疫誘導に必須であることが示された。MVはこれらのタンパク質を宿主免疫細胞に輸送することによって,免疫調節因子として機能すると考えられる。