[WS9-3/ODP-156] 鼻咽腔に定着する肺炎球菌が非血行性に脳へ伝播する機構の解析
細菌性髄膜炎は,鼻咽腔に定着する細菌が血行性に髄膜へ伝播することにより発症すると推察されている。しかし,鼻咽腔から血流中への細菌伝播を決定づける因子や血液脳関門を破綻させる分子機構は不明である。肺炎球菌は細菌性髄膜炎の予後不良因子である。本研究では,肺炎球菌をモデル細菌として,鼻咽腔に定着した細菌が血液脳関門を通過せず,嗅覚神経経路を介して非血行性に脳内へ到達するかについて解析を行った。
中耳炎由来の肺炎球菌EF3030株(血清型19F)をマウス(Balb/c,メス,6週齢)の鼻腔内に感染させ,非血行性髄膜炎モデルとした。この感染モデルでは,肺組織と血液中から肺炎球菌は検出されなかった。一方で,脳組織ホモジネート中の菌数測定により,肺炎球菌が脳の嗅球から大脳と小脳に向かって伝播する現象を認めた。また,EF3030株を親株として,ニューモライシン遺伝子(ply)欠失株を作製した。感染1,3,7,28日後において,野生株とply欠失株の鼻粘膜上皮への定着菌数に有意差は認められなかったが,嗅球,大脳,および小脳への伝播能はply遺伝子の欠失により有意に低下した。組換えニューモライシンを経鼻投与した24時間後にply欠失株を経鼻感染させた結果,野生株と同程度の脳伝播能を認めた。さらに,野生株感染群の鼻腔洗浄液では,非感染群と比較して,ケモカインであるCXCL2遺伝子の発現ならびに細胞間接着分子群の遺伝子の転写を抑制するSnail1遺伝子の発現の上昇を認めたが,ply欠失株感染群では非感染群と同等レベルであった。
以上の結果から,鼻咽腔に定着した肺炎球菌はニューモライシンにより鼻粘膜上皮バリアを傷害し,非血行性に脳組織へ伝播することが示唆された。
中耳炎由来の肺炎球菌EF3030株(血清型19F)をマウス(Balb/c,メス,6週齢)の鼻腔内に感染させ,非血行性髄膜炎モデルとした。この感染モデルでは,肺組織と血液中から肺炎球菌は検出されなかった。一方で,脳組織ホモジネート中の菌数測定により,肺炎球菌が脳の嗅球から大脳と小脳に向かって伝播する現象を認めた。また,EF3030株を親株として,ニューモライシン遺伝子(ply)欠失株を作製した。感染1,3,7,28日後において,野生株とply欠失株の鼻粘膜上皮への定着菌数に有意差は認められなかったが,嗅球,大脳,および小脳への伝播能はply遺伝子の欠失により有意に低下した。組換えニューモライシンを経鼻投与した24時間後にply欠失株を経鼻感染させた結果,野生株と同程度の脳伝播能を認めた。さらに,野生株感染群の鼻腔洗浄液では,非感染群と比較して,ケモカインであるCXCL2遺伝子の発現ならびに細胞間接着分子群の遺伝子の転写を抑制するSnail1遺伝子の発現の上昇を認めたが,ply欠失株感染群では非感染群と同等レベルであった。
以上の結果から,鼻咽腔に定着した肺炎球菌はニューモライシンにより鼻粘膜上皮バリアを傷害し,非血行性に脳組織へ伝播することが示唆された。