第94回日本細菌学会総会

講演情報

ワークショップ

[WS9] 選抜ワークショップ:病原因子と生態防御(感染モデル・寄生・免疫・ワクチン)/病原体と感染症

2021年3月25日(木) 12:45 〜 14:45 チャンネル3

コンビーナー:藤永 由佳子(金沢大学),住友 倫子(大阪大学)

[WS9-4/ODP-161] 組織透明化/3次元イメージング「CUBIC」による抗酸菌感染の生体内モニタリング

○袴田 真理子1,2,井内 絵梨奈1,横山 晃1,3,尾関 百合子1,西山 晃史1,立石 善隆1,大橋 璃子4,菊地 利明2,田井中 一貴5,松本 壮吉1 (1新潟大・医・細菌学,2新潟大・医・呼吸器・感染症内科学,3東京大・医・呼吸器内科学,4新潟大・医・病理標本センター,5新潟大・脳研究所・システム脳病態学)

結核は現在も世界で年間150万人が亡くなっている,世界三大感染症の一つである。また難治性の非結核性抗酸菌症の罹患率の増加も著しい。対策構築のために,抗酸菌と宿主応答の体内動態を知る必要があり,透明であることからMycobacterium marinumとゼブラフィッシュを用いたモデルが報告されているが,魚類と脊椎動物では免疫システムが異なる。これまで不透明である哺乳類において,個体・臓器における分子や細胞の動きを検出するために高度な組織透明化手法の開発が必要とされてきた。近年開発された組織透明化/3次元イメージング「CUBIC」では,生体内における癌細胞の転移など希少の細胞を生体内構造の中で,特定しその数を算出できることが報告された。本研究では,蛍光蛋白を発現する遺伝子組み換え抗酸菌 (Mycobacterium tuberculosis variant BCG, Mycobacterium avium, Mycobacterium tuberculosis H37Rv) とCUBIC技術を用いて,マウス体内における抗酸菌症の動態を詳細かつ3次元的に解析した。その結果,マウス体内で菌単体のレベルで細菌を検出でき,感染後臓器のホモジネートを培地に播種した後の集落形成数(CFU)で算出した菌数とCUBIC技術を用いて算出した菌数が相関することが明らかになった.また,菌種による体内動態の違いも確認された。CUBIC技術は,哺乳類における抗酸菌症の体内動態を把握する強力なツールとなり,現在難治性の抗酸菌症の治療や病態解明にとって大きな貢献をする可能性が示唆される。