第94回日本細菌学会総会

講演情報

若手研究者支援シンポジウム

[YRS5] 産業化を組み込む細菌学の生存戦略

2021年3月25日(木) 09:15 〜 11:45 チャンネル2

コンビーナー:島本 整(広島大学),二川 浩樹(広島大学)

共催:広島大学 日本食・発酵食品の革新的研究開発拠点

[YRS5-4] 茶色い宝石が切り拓くブラウンオーシャン大航海時代

○福田 真嗣1,2,3,4 (1慶大・先端生命研,2神奈川産技総研,3筑波大・TMRC,4メタジェン)

みなさんは茶色い宝石をご存知でしょうか?われわれヒトの腸内にはおよそ1,000種類で38兆個にもおよぶとされる細菌群が生息しており,これらの集団(細菌叢と呼ぶ)は健康維持や疾患発症に大きく関与することが近年の研究で続々と明らかとなっています。したがってその重要性から,腸内細菌叢を含む腸内環境全体を体内における一つの臓器と捉え,その制御をすることが(これを腸内デザインと定義),新たな健康維持や疾患予防・治療方法として有用であることは想像に難くない。しかし,みなさんはご自身の腸内細菌叢の組成や腸内細菌叢がどのような代謝物質を産生し,それらがみなさんの身体にどのように作用しているのか,さらには個々人によって腸内細菌叢の組成や代謝物質が異なり,食べ物や薬剤の効果も異なることをご存知ないかもしれない。こういった背景の元,われわれは病気ゼロ社会の実現を理念に掲げ,慶應義塾大学と東京工業大学とのジョイントベンチャーとして2015年に株式会社メタジェンを設立した。本発表では,茶色い宝石に基づく「層別化」をキーワードに,個々人で異なる腸内環境の特徴を見出し,食習慣の改善や適切なサプリメント開発,さらには創薬など,腸内環境に基づく新たな健康維持,疾患予防・治療基盤技術の創出に向けたわれわれの取り組みについて紹介します。ブラウンオーシャン大航海時代はもう既に始まっています!