第95回日本細菌学会総会

講演情報

学会企画 中・高校生研究発表セッション

[JRS] 中・高校生研究発表セッション

2022年3月29日(火) 14:30 〜 19:25 チャンネル3

コンビーナー:河村 好章(愛知学院大学),寺尾 豊(新潟大学),垣内 力(岡山大学)

[JRS-16] 走化性実験による植物病原菌の気孔認識物質の同定

木村 峻大 (兵庫県立神戸高等学校)

私は,植物病原細菌による農作物への被害を防ぐために,病原細菌の侵入過程における気孔認識が重要であると考えた.トマト斑葉細菌病菌はシロイヌナズナ葉上で閉口気孔には近づかず,開口気孔に集まることが知られている.気孔開口部周辺における誘引物質の存在を示唆しているが,それは同定されていない.本研究ではその誘引物質の同定を目指している.DIP法によりトマト葉上に600 nm で0.1-0.2 Absのトマト斑葉細菌病菌を接種した.4日後,試料を固定しSEMを用いて気孔周辺の病原細菌の様子を観察した.走化性実験では濃度を通常の1/5にしたLB液体培地で培養したトマト斑葉細菌病菌と1.2%アガロースを1:1で混合して固化させた.その中心に濾紙を置き,濃度を変えたグルコース,リンゴ酸,クエン酸を滴下し,24時間後まで病原細菌の挙動を観察した.今後は,この実験系と自作の装置を用いて,気孔放出物質や植物揮発性物質の誘因活性の調査を行う.接種から4日後,病原細菌の集団が接種葉の一部の開口気孔でのみ確認された.トマト斑葉細菌病菌は,トマト葉上で開口気孔へ選択的に移動する性質があると考えられた.主要代謝物を用いた走化性実験では,菌密度が高くなった部分や忌避領域の大きさは化合物の濃度と正の相関関係を示した.リンゴ酸やクエン酸にも正の走化性を示すと考えられるが,両化合物とも酸性が強いため忌避領域ができたと推測した.実際,pHを調整すると忌避円は小さくなった.トマト斑葉細菌病菌は,一定の濃度範囲の化学物質で運動性が活性化され,走化性を示す.この性質が植物気孔からの侵入に必要と考えられる.