[ODP-009] MLST analysis of Cronobacter spp. isolated in Japan
クロノバクター属菌は乳児に髄膜炎や敗血症,壊死性腸炎を,成人には尿路及び創傷感染を引き起こす.本菌による感染症は稀であるが,乳児への主な感染経路が本菌に汚染された乳児用調製粉乳であることから,公衆衛生上の大きな問題となりうる.本研究では国内分離クロノバクター菌株について分子疫学的解析を行った. 臨床分離株(1か月男児血液由来)1株と国内流通食品由来株46株(野菜由来14株,内臓肉由来22株,乾燥食品由来8株,魚介類由来2株)について,7遺伝子座を用いたMLST解析を行ったところ,33株がCronobacter sakazakii,11株がCronobacter malonaticus,2株がCronobacter dublinensisと同定された.牛内臓,野菜及び乾燥食品由来の7株は,最も主要なSequence Type (ST)でクロノバクター症患者から分離されることが多いC. sakazakii ST4に属していた.牛及び豚内臓由来の9株はC. sakazakii ST8に,牛内臓及び小麦粉由来の7株はC. malonaticus ST17に属していた.一方,多くの国で分離されている主要なSTのひとつであるC. sakazakii ST1に属する株は見られなかった. 臨床由来株はC. sakazakii ST308であった.Cronobacter pubMLSTによると,このSTには中国の糞便及び直腸スワブ由来株,オーストリアの粉乳由来株,ブラジルのコーンミール由来株が属していた.本研究で用いた全菌株が,病原性関連遺伝子のompA と fliC を保有していた.C. sakazakii 33株 のうち11株はプラスミド性の病原因子cpa を保有していなかったが,zinc protease をコードするzpx 遺伝子はほぼ全ての株が保有していた. 本研究により,地域性は少ないとされてきた本菌のSTに国内特有の傾向がある可能性が示された.