第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP6] 2. 生態-a. 生態・共生・環境微生物

[ODP-029] 食物およびヒト糞便から分離した放線菌の人工消化液での生残性

武 晃1,阪口 義彦1,稲橋 佑起2,後藤 和義3,林 俊治1,加藤 はる4,大宮 直木5 (1北里大・医・微生物,2北里大・大村智記念研,3岡山大院・医歯薬学総合・病原細菌,4感染研・AMR研究セ,5藤田医科大・先端光学診療)


【背景・目的】Clostridioides difficile感染症(CDI)は,C. difficileが原因で起こる下痢症・腸炎である.糞便微生物移植(FMT)により再発予防効果のあったCDI患者とドナーの糞便のメタゲノム解析を行ったところ,FMT後の患者およびドナーに特定の放線菌が検出された.放線菌は,土壌や植物に広く生息しており,様々な生理活性物質を生産していることが知られている.本研究では,食物(根菜)由来の放線菌がCDIの改善に何らかの役割を担っていると考え,食物およびヒト糞便から放線菌を分離し,人工消化液での生残性評価を行った.
【方法】放線菌は,根菜およびヒト糞便検体の2種類から分離した.糞便検体の取り扱いは,北里大学医学部倫理委員会で承認を得て行った(承認番号 B19-329).得られた分離株は,16S rRNA遺伝子をBLAST解析することで菌種を推定した.消化液生残性については,人工消化液に37℃で種々の時間浸漬し,培地に塗布して生育したものを消化液耐性と判定した.C. difficileに対する抗菌活性評価は,ペーパーディスク法により行った.
【結果・考察】根菜からは632株,ヒト糞便検体からは17株の放線菌が分離された.根菜およびヒト糞便検体由来では,共通株が存在した.食物由来株においては9割が消化液耐性を有しており,1割がC. difficileに対して抗菌活性を示した.糞便検体由来株についても同様の検討を行っている.以上から,食物に棲息する放線菌は多様な二次代謝産物の生産能を持つと考えられ,放線菌が生きたまま腸内へ移行し,腸内において何らかの役割を担っていると推察される.