第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP7] 2. 生態-b. 細菌叢

[ODP-035] 模擬皮膚表面上で皮膚細菌が形成する複合バイオフィルムの解析

中山 瑞鵬1,釣流 香織1,2,野村 暢彦2,3,Andrew Shinichi Utada2,3,尾花 望3,4 (1筑波大・生命環境,2筑波大・生命環境系,3筑波大・MiCS,4筑波大・医学医療系・TMRC)


ヒトの皮膚表面に常在する皮膚細菌は,複数種から成る複合バイオフィルム様の生活様式を示すと考えられる.また複合バイオフィルム中における異種細菌間相互作用は,宿主の健康や疾患に影響すると考えられるが,皮膚細菌の複合バイオフィルムの時空間的挙動に関する知見は乏しい.本研究では皮膚常在細菌である表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)とアクネ菌(Cutibacterium acnes)を用いて,皮膚細菌間相互作用が複合バイオフィルム形成に与える影響の解明を目的とした.ヒトの皮膚表面上の皺の深さを計測し,皮膚の凹凸を簡易的に模倣したマイクロデバイスを作製した.共焦点レーザー顕微鏡を用いて,本デバイス上に形成された表皮ブドウ球菌およびアクネ菌のバイオフィルムを観察・解析した.その結果,表皮ブドウ球菌単独および共培養時にはバイオフィルム形成が認められ,共培養時では単独培養と比較してバイオフィルム形成量が増加していた.共培養時のバイオフィルム底面部には,単独ではバイオフィルムを形成できないアクネ菌が定着していた.また,複合バイオフィルムでは表皮ブドウ球菌由来の細胞外DNA量が増加しており,本細胞外DNAは複合バイオフィルムの細胞外マトリクスとして機能し,アクネ菌の定着に寄与していることが明らかとなった.また,両者の複合バイオフィルム形成を比較したところ,凹凸表面上ではアクネ菌の存在割合が増加することが示された.以上より,表皮ブドウ球菌とアクネ菌は協調的に強固な複合バイオフィルムを形成すると考えられ,皮膚の凹凸表面構造はアクネ菌の複合バイオフィルムへの定着量や,複合バイオフィルムの性状に影響を与えることが示唆された.