[ODP-036] Effects of temperature and humidity control on the survivability of E. coli on dry surface model
【背景】高頻度接触面に付着した細菌は,医療関連感染の原因となりうる.これらの表面は乾燥しており,細菌は生存のため乾燥抵抗性を獲得していると考えられる.本研究室では,ヒト病原細菌は低温で生存性が増すことを見出した(下田らPLoS One 2019).しかし湿度による影響は不明であった.そこで恒温恒湿機を使用し,温度と共に湿度が高頻度接触面を模倣した乾燥面の大腸菌の生存性に与える影響を調査した.
【方法】対数増殖期の大腸菌DH5αを用いて懸濁液(1.0x1010CFU/mL)を作成した.懸濁液を5 μLずつ96穴プレートに接種し,目視で完全に乾燥するまで静置した.乾燥直後の菌はLB液体培地100 μLで懸濁し回収した.乾燥させた菌を塗抹したプレートは,異なる温度と湿度条件に設定した環境にて18時間静置した(小型恒温恒湿器,ヤマト科学).温度は4℃刻みで25℃,29℃,33℃,37℃,湿度は15%刻みで45%,60%,75%,90%とした.三重測定を行い,乾燥直後と静置18時間後の生菌数を比較した.統計解析は,ピアソンの相関係数の検定とBonferroni/Dunn法による多重比較検定を用いた.
【結果・考察】実験に使用した全湿度において,温度と大腸菌の生存率には-0.583の逆相関関係があり,温度が上がるほど生存率は有意に低下した(p<0.001).また,実験に使用した全温度において,湿度と大腸菌の生存率には-0.276のやや逆相関関係があり,湿度が上がるほど生存率は有意に低下した(p=0.006).現在,大腸菌の乾燥抵抗性を規定する遺伝子nhaAについて乾燥時の発現状況を調査中である.
(非会員協力者: 榎枝秀朗)