[ODP-049] Glutathione synthetase gene in Streptococcus anginosus group
【目的】Streptococcus anginosus group（SAG）はviridans group streptococciの一つだが，嫌気的な環境を好み，深部臓器の膿瘍性病変を作りやすいことが知られている．S. intermediusはS. anginosus, S. constellatusに比較すると，より嫌気要求性が高いことから，特に活性酸素（ROS）応答機構の違いがあるのではないかと考え，全ゲノム比較を行った．
【方法】HiSeq, PacBioでのゲノム解析を行い，一部はファージミドクローニングによるSanger解析でgap closingを行った．Streptococcus属は全ての菌種はbifunctional glutamate-cysteine ligase/glutathione synthetase遺伝子（gshA）を保有しており，その全領域を増幅するlong PCRとdirect sequenceを行い，菌株毎の違いを調べた．菌株は当科保存の様々な由来の臨床分離SAG 300株を用いた．
【結果】調べた全てのS. interemedius 100株では，gshAのうち，137-1621の1484 bpの大きなdeletionがあり，glutathione生合成能を欠落していることが判明した．一方，亜種を含め，S. anginosus 100株 S. constellatus 100株ではこのようなdeletionは見られなかった．deletion前後にはファージやtransposaseなどの配列は認められず，どのような機序でこの脱落が生じたのかは不明であった．
【考察】S. intermediusはSAGの中ではintermedilysinのような特殊な毒素を保有し，病原性がSAGの中では最も高いと考えられている．また，今回の結果から，S. intermediusは他の菌種と比べ，ROS抵抗性が劣り，嫌気要求性が高いことが示唆された．glutathione産生能が欠落していることは，宿主にsulfide mediator認識されにくく，感染を継続するメリットがあるかも知れない．