第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP12] 3. 生理・構造-c. 情報伝達(菌体内・菌細胞間)

[ODP-055] 偏性嫌気性細菌Clostridium sporogenesの走化性物質スクリーニング系の最適化

西山 宗一郎,小池 祥平,高橋 亜美,浦上 弘 (新潟薬科大・応用生命・食品安全学)


Clostridium属細菌は芽胞を形成するグラム陽性偏性嫌気性菌であり,ボツリヌス菌(C. botulinum)や破傷風菌(C. tetani)などの病原細菌が含まれる.この2種を筆頭に,Clostridium属細菌の少なくとも数種については周毛性べん毛を備え運動性を示す.しかし一方でこれらの走化性能の解析は進んでおらず,そもそもどのような化学物質が誘引あるいは忌避物質になるかもよく分かっていない. 本研究では,まずはボツリヌス菌に近縁でありながら毒素を産生せず,取り扱いが容易なスポロゲネス菌(C. sporogenes)をターゲットとし,走化性物質をスクリーニングする系の最適化を目指した.まずは希釈した標準培地を用い,走化性能を評価する簡便な手法である軟寒天上でのスウォームアッセイの解析系を確立した.次にこれを応用したスクリーニング系を試したところ,誘引物質としてL-アルギニン, L-システインを見出したが,検出感度が鈍い問題があり他の誘引物質は見つけられなかった.そこでより貧栄養な最小培地を用いて最適化を目指した.まず液体の最小培地でC. sporogenesを培養したところ,極めてゆっくりであるが増殖することを確認した.希釈した標準培地と比較すると,運動性を示す菌の割合は極端に低かった.しかしこの最小培地の成分で軟寒天培地を作製して植菌し,培養時間を十分に長く取ることで誘引応答の検出に成功した.このシステムを用いてスクリーニングを行い, 新たにL-セリンやL-アラニンもC. sporogenesの誘引物質であることが示唆された.現在他のアミノ酸のスクリーニングを行っているが,更に糖など他の化学物質についても同様のスクリーニングを行う予定である.