第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP13] 3. 生理・構造-d. 菌体表層構造・膜構造・細胞骨格

[ODP-061] 海洋性Vibrio属菌べん毛モーター回転子タンパク質FliM変異による極べん毛本数の増加

本間 道夫1,竹川 宜宏2,梶野 洸樹1,藤原 和志1,尾上 靖弘3,小嶋 誠司1 (1名大・院理・生命理学,2阪大・院理・高分子科学,3立命館大・生命科学)


海洋細菌Vibrio alginolyticusは,細胞の極に1本のべん毛を形成する.Vibrio属菌では,FlhFとFlhGという2つのタンパク質が,極にあるべん毛の数と位置を調節していることが分かっている.当研究室で,軟寒天培地中で遊走リングが小さくなる変異株として分離したNMB155株は,FlhFとFlhGに変異を持たないが,複数の極べん毛をもつ表現型を示すことが分かっていた.この菌株の全ゲノム配列を解析した結果,べん毛モーター回転子Cリングを構成するFliMタンパク質の9番目のアミノ酸であるグルタミン酸がリジン(E9K)になっていることが判明した.FliMに変異があると,べん毛の形成(fla)と回転(cheまたはmot)に欠陥が生じることが知られている.また,このリジン残基はFliMのN末端に存在する高度に保存されたEIDALモチーフの中にあり,シェワネラ菌では,このモチーフとFlhGが相互作用することが報告されている.ビブリオ菌極べん毛野生株VIO5株から,べん毛を形成しないfliM欠損株NMB321を作製した.FliMにE9K変異体を導入して,fliM欠損株を形質転換したところ,菌は極に複数のべん毛を形成した.また,この変異によってべん毛の回転方向を変えずにまっすぐ泳ぐ,che表現型も見られた.野生型のFliMをNMB155株で発現させると,表現型は野生型を示した.E9AとD8K変異体を作製したが,前者は多べん毛になったが,後者は野生型を示した.なぜ,モーター回転子タンパク質のFliMに起こったE9K変異によって多べん毛が形成されるのかを議論したい.