[ODP-084] Intra-Macrophage Expression of ArtAB Toxin Gene in Salmonella
【背景】Salmonella Typhimuriumファージ型DT104 ,S. Worthington(SW)などのサルモネラ属菌が百日咳毒素と類似した毒素ArtABを産生することが報告されている.これまでの研究により,artAB遺伝子はマイトマイシンC ,H2O2などの処理により誘導的に発現することが知られているが,in vivoでの発現は不明である.そこで本研究ではDT104をマクロファージ様細胞RAW264.7に貪食させ,リアルタイムPCR法により細胞内におけるartABの発現について解析した.
【方法】DMEM培地でRAW264.7細胞を培養後,PMAを添加し,マクロファージ由来のH2O2産生を誘導した.そこへ一晩振とう培養し正常マウス血清によりオプソニン化したDT104を加えインキュベートした.その後,ゲンタマイシン処理により細胞外の菌を除去し,細胞を溶解して得られた細胞内の菌からtotal RNAを抽出した.このRNAを用いて,リアルタイムPCR法で各遺伝子の発現量を定量した.
【結果と総括】RAW264.7細胞内のDT104のartA発現量は,in vitroでの発現量と比較して有意に増加し,PMAで処理した群では,無処理群と比較し発現量がさらに増加していた.これらのことからartABはRAW264.7細胞内で誘導的に発現し,その発現誘導はマクロファージ由来のH2O2で増強することが示唆された.また,DT104ではoxyRとc1の発現量に有意な変化が認められなかったが,SWでは細胞内でoxyRとc1の有意に増加し,artAの有意な増加が見られなかった.以上より,マクロファージ内におけるDT104のartABはH2O2により誘導的に発現するが,SWのようにoxyRの発現応答が強い菌ではC1によりファージ誘導が抑制されるためにartABの細胞内発現が弱くなることが示唆された.