第95回日本細菌学会総会

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オンデマンド口頭発表

[ODP19] 4. 遺伝・ゲノミクス・バイオテクノロジー-d. 遺伝子組換え・解析技術・バイオテクノロジー・合成生物学

[ODP-092/W5-5] 病原真菌Trichosporon asahiiにおける高効率な遺伝子組換え技術の開発

松本 靖彦1,長町 多恵1,吉川 麻美1,山田 剛2,3,杉田 隆1 (1明治薬科大・薬・微生物学,2帝京大・医真菌,3帝京大・アジア国際感染症制御)


病原真菌であるTrichosporon asahiiは,好中球が減少した患者に対して重篤な深在性真菌症を引き起こす.しかし,T. asahiiの遺伝子欠損株の作製法が確立されておらず,遺伝学的な手法による感染機構の解明が行えなかった.本研究で我々は,T. asahiiのカイコ感染モデル確立し,高病原性の臨床分離株を親株として高い効率で遺伝子欠損株を作製する方法を開発した.T. asahiiを接種してカイコが死亡する条件を明らかにした.カイコを死亡させるために必要な菌の投与量であるLD50を算出して,複数のT. asahiiの臨床分離株の中から病原性が強い株としてMPU129株を見出した.アグロバクテリウムを用いた遺伝子導入法を用いて,MPU129株におけるDNAの非相同末端結合に関わるKu70タンパク質をコードするku70遺伝子の欠損株を得た.このku70遺伝子欠損株は,栄養培地での増殖やカイコに対する病原性は低下していなかった.ku70遺伝子欠損株は,野生株よりカルシニューリンのβサブユニットをコードするcnb1遺伝子の欠損株の作製の効率が高かった.cnb1遺伝子欠損株は,カイコに対する病原性が低下していた.以上の結果は,カイコに対して病原性の強いT. asahii MPU129株における高効率な遺伝子欠損株作製技術が開発できたことを示唆している.