第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP22] 5. 病原性-b. 毒素・エフェクター・生理活性物質

[ODP-112] ウエルシュ菌デルタ毒素の作用発現に関与するアミノ酸残基の検索

堤 綾乃,小林 敬子,竹原 正也,永浜 政博 (徳島文理大・薬・微生物)


BとC型ウエルシュ菌が産生するデルタ毒素は,分子量32kDaのタンパク毒素で,pore-forming-toxin(PFT)に属し,細胞膜上でオリゴマーを形成して溶血や細胞死などの生物活性を示す.今回,デルタ毒素の活性発現に重要なアミノ酸残基を検討するため,その構造から,細胞内侵入に関与するステムドメインの224位セリン残基,細胞膜結合に関与するリムドメインの81位と201位チロシン残基を,それぞれY81A,Y201A,S224Aにアミノ酸残基の置換を行い,その作用を検討した.MDCK細胞,A549細胞,及びCaco-2細胞に対する毒性を検討すると,ワイルドタイプ(WT)と比較して,Y81Aは毒性が低下し,S224AとY201Aは毒性を示さなかった.次に,変異毒素の細胞への結合を比較すると,いずれの細胞においてもY81AとWTは同程度にモノマーとオリゴマーの結合が認められた.一方,Y201Aは結合が認められず,S224Aはモノマーの結合は,WTと同程度で,オリゴマーは少なかった.以上より,本毒素の81位チロシン残基は細胞に結合し毒素活性を示すことから,毒素活性への関与は低いと考えられる.これに対して,201位チロシン残基は細胞に全く結合しないので,細胞膜への結合に関与し,224位セリン残基は,オリゴマー形成能が低く,活性をほとんど示さないことから,オリゴマー形成に関与すると考えられる.