第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP22] 5. 病原性-b. 毒素・エフェクター・生理活性物質

[ODP-119] ボルデテラ属細菌のBteAとヒトMoesinの相互作用の解析

山下 真緒,桑江 朝臣,阿部 章夫 (北里大・院・感染制御科学府・分子細菌)


Bordetella属細菌のBteAはIII型分泌装置により宿主細胞質内に移行した後,細胞膜破壊を伴う細胞死を誘導する.先行研究からBteAは,Ezrin, Radixinと共にERMファミリータンパク質に含まれるMoesinと相互作用することで,細胞膜破壊に関与している可能性が示されている.本研究では,BteAとMoesinの相互作用について解析を行った.まず細胞内でBteAとMoesinが共局在するかを調べるために,BteA-N600, N400, N200(N末端より600番目,400番目,200番目までのアミノ酸領域)とpEGFPの融合タンパク質をコードするプラスミドと,ERMファミリータンパク質とmStrawberryの融合タンパク質をコードするプラスミドを作製した.これらのプラスミドをCos7細胞に導入し,EGFPとmStrawberryの蛍光シグナルが共局在している細胞の数を計測した.その結果,Ezrin, Radixinを導入した細胞では有意な共局在は認められなかったが,Moesinを導入した細胞ではBteA-N600, N400において共局在が認められた.またBteA-N200においてはMoesinとの有意な共局在は認められなかった.次にin vitroでBteAとMoesinが結合するのか調べるために,細胞溶解液とBteA部分欠失変異体を混合しプルダウンアッセイを行った.その結果,MoesinとBteA-N600およびBteA-N(1~312アミノ酸領域)の結合は認められたが,BteA-C(313~658アミノ酸領域)との結合は認められなかった.蛍光顕微鏡観察の結果から,MoesinはBteAの201~400番目のアミノ酸領域で相互作用することが示唆された.またin vitroにおいて,MoesinはBteAのN末端側と結合することが示唆された.