The 95th Annual Meeting of Japanese Society for Bacteriology

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[ODP22] 5. Pathogenicity -b. Toxins, effectors and physically active substances

[ODP-129] A microporous carbon suppresses virulence of Enterohemorrhagic Escherichia coli

Hidetada Hirakawa1, Kazutomo Suzue3, Ayako Takita1, Wataru Kamitani3, Haruyoshi Tomita1,2 (1Dept. Bacteriol., Sch. Med., Gunma. Univ., 2Lab. Drug Resist., Sch. Med., Gunma Univ., 3Dept. Infect Dis., Sch. Med., Gunma. Univ.)


【目的】腸管出血性大腸菌は,食中毒の起因菌であり出血性の下痢に加えて,溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの発症により重症化することが知られている.本菌の主要な病原性因子として,志賀毒素と3型分泌蛋白質と呼ばれる2種類の病原性蛋白質が知られている.本研究では,上記の病原性蛋白質を吸着すると期待される150 nmのマクロ細孔を持つ多孔質炭素を用いて本菌の病原性の抑制を試みた.
【方法】ラテックス凝集反応試験により,志賀毒素の定量を行った.3型分泌蛋白質の定量はEspA/B抗血清を用いたウエスタンブロッティングにより行った.Citrobacter rodentiumを用いてマウスの腸管内における病原性評価を行った.
【結果】腸管出血性大腸菌を本多孔質炭素存在下で培養を行った結果,志賀毒素とEspA/Bの両蛋白質とも強く吸着されることがわかった.一方で,志賀毒素とEspA/Bの発現レベルには影響を与えなかった.本多孔質炭素を餌とともに摂食させたマウスにおいて,C. rodentium感染後の生存日数は,非摂食群と比べて3日以上の延長が観察された.一方で,本炭多孔質素摂食により消化管の傷害や生育不良などの異常は認められなかった.さらに,宿主の上皮細胞や乳酸菌および,腸球菌などの腸内細菌に対しても悪影響を与えなかった.
【考察】以上の結果から,本多孔質炭素は,志賀毒素と3型分泌蛋白質を吸着することで,腸管出血性大腸菌の病原性を減弱できることが示された.本菌は,抗菌薬投与によって志賀毒素が大量放出されるため,本菌による感染症重症化を確実に防ぐ術は確立されていない.本多孔質炭素を用いたアイデアは,本感染症の重症化を防ぐ手法の確立につながるものと期待される.