[ODP-162] Effect of periodontal pathogen culture supernatant and antimicrobial agents on S. pneumoniae
【目的】肺炎球菌は主要な呼吸器病原性菌の一つで,小児の呼吸器感染症の主な原因菌である.さらに,65歳以上の高齢者や,64歳以下でも糖尿病・呼吸器疾患などの基礎疾患をもつ患者は罹患しやすく重症化する可能性が高い.この菌の病原因子には,莢膜,付着因子およびさまざまな組織破壊酵素が報告されている.歯周病は加齢とともに有病率が上昇する内因疾患で,30歳代以上では3人に2人が罹患している国民病であり,その発症には歯周病原菌が深く関与している.そこで今回,肺炎レンサ球菌の発育と病原因子のひとつで細胞の脂質二重層を障害するpneumolysin(Ply)活性に対する歯周病原菌の培養上清および抗菌成分の影響について検討した.
【方法】肺炎レンサ球菌はATCC49619株を供試した.試料には歯周病原菌5菌種の培養上清と抗菌成分のアリルイソチオシアネート(AITC)とエピガロカテキンガレート(EGCg)を用いた.各試料を添加した培地で被験菌株を培養し,濁度から発育への影響を検討した.また,Ply活性への影響は,各試料を添加した培地で培養した上清とヒツジ赤血球を混和して37℃,30分処理後の遠心上清の濁度から溶血能を評価した.
【結果及び考察】発育への影響ではTannerella forsythiaの上清で増殖促進傾向がみられたが,AITCとEGCgでは濃度依存的に抑制した.一方,Ply活性への影響は,歯周病原菌上清,AITCおよびEGCgは発育に影響を与えない濃度でも活性を抑制していた.これらの結果から,今回用いた成分は肺炎レンサ球菌の発育と病原因子に影響を与えることが示唆された.
(学会会員外協力者 日本大学歯学部口腔外科学講座 外木守雄,株式会社 松風 中塚稔之)