The 95th Annual Meeting of Japanese Society for Bacteriology

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[ODP26] 5. Pathogenicity -f. Others

[ODP-166] Effect of pH changes on gene expression of A. actinomycetemcomitans in the gingival sulcus

Noriko Shinozaki-Kuwahara1, Koichi Hiratsuka2, Masanori Saito1, Tomomi Hashizume-Takizawa1, Hidenobu Senpuku1 (1Dept. Microbiol. Immunol., Nihon Univ. Sch. Dent. at Matsudo, 2Dept. Biochem. Mol. Biol., Nihon Univ. Sch. Dent. at Matsudo)


ヒト歯肉溝のpHは口腔細菌叢および宿主の応答性にそれぞれ影響を及ぼすことが知られており,pHの変動と歯周疾患の発症や進行に関連性があると報告されている.今回,侵襲性歯周炎の主要な病原細菌とされるAggregatibacter actinomycetemcomitansA.a)についてpH変化と遺伝子発現の動態について網羅的な検討を行った.
【方法】液体培地にてA.a HK1651株を培養し,集菌後,pH7.5をコントロールとして酸性条件のpH5.0に調製した緩衝液にそれぞれ懸濁した.37°Cで5分および30分後にそれぞれtotal RNAを抽出した.その後mRNA-richなサンプルを調製し,全遺伝子発現量の検討はマイクロアレイを用いて行った.コントロールに対して発現量が2倍以上変動した遺伝子を検討の対象とした.
【結果】コントロールと比較して発現量が2倍以上の差がある遺伝子数は5分では947(増加473,減少474)個であった.変動が見られたものではシャペロニンや熱ショックタンパク質,酸化還元反応や脱水素反応に関与する酵素などmolecular functionに分類される遺伝子が多く含まれていた.一方,30分後では90(増加85,減少5)個であり,5分後と比較して発現量が変動する遺伝子数が著しく減少していた.この中で5分後と共通する遺伝子数は増加25,減少5個であり,DNA修復に関与するタンパク質などが見られた.またA. aの主要な病原因子である線毛,白血球毒素,細胞膨化致死毒素をコードする遺伝子について検索したところ,これらの遺伝子は5よび30分後のどちらも発現量に大きな変化は見られなかった.従って歯肉溝内の環境がpH5.0程度の酸性下である場合,宿主に対してA. aの主要な病原因子が与える影響は少ないものと考えられた.