第95回日本細菌学会総会

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オンデマンド口頭発表

[ODP27] 6. 生体防御-a. 自然免疫

[ODP-168/W9-8] A型ウエルシュ菌感染時のToll様受容体4の役割

竹原 正也,小林 敬子,永浜 政博 (徳島文理大・薬・微生物)


グラム陽性偏性嫌気性菌のA型ウエルシュ菌は,筋壊死を主徴とするガス壊疽を起こす.通常,感染したグラム陽性菌はToll様受容体2 (TLR2)に,グラム陰性菌はTLR4にそれぞれ認識され,宿主免疫が発動するが,グラム陽性菌の感染に対するTLR4の役割は不明な点が多い.本研究では,グラム陽性菌であるA型ウエルシュ菌に対するTLR4の役割について検討を行った.
はじめに,野生型TLR4を発現するC3H/HeNマウス,及び機能を欠損した変異型TLR4を発現するC3H/HeJマウスの大腿筋にA型ウエルシュ菌をそれぞれ投与し,マウスの生存を観察した.その結果,C3H/HeNマウスはC3H/HeJマウスと比較して感染後の死亡率が高かった.また,ウエルシュ菌が感染した大腿筋での生菌数は,C3H/HeNマウスと比較してC3H/HeJマウスで有意に高かった.次に,大腿筋での顆粒コロニー刺激因子 (G-CSF)の産生をELISA法で定量すると,C3H/HeNマウスではウエルシュ菌の感染依存的にG-CSFが顕著に増加したが,C3H/HeJマウスではG-CSFの増加が限定的であった.また,脾臓での好中球数を定量すると,C3H/HeNマウスではウエルシュ菌の感染依存的に好中球が顕著に増加したが,C3H/HeJマウスでは好中球の増加は限定的であった.以上の結果より,TLR4はウエルシュ菌感染時にG-CSFの産生を亢進して好中球の産生を促進し,自然免疫を強化すると考えられる.すなわち,TLR4は宿主の免疫を強化してウエルシュ菌を排除し,宿主の生体防御に関与することが判明した.