第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP28] 6. 生体防御-b. 適応免疫・ワクチン・その他の感染予防法

[ODP-181] T細胞受容体シグナルを標的とした超硫黄分子による免疫応答制御

守田 匡伸1,山田 充啓2,佐々木 優作2,井田 智章1,松永 哲郎1,稲葉 謙次3,石井 直人4,杉浦 久敏2,本橋 ほづみ5,赤池 孝章1 (1東北大院・医・環境医学,2東北大院・医・呼吸器内科,3東北大・多元物質科学研究所・生体分子構造研究分野,4東北大学院・医・免疫,5東北大・加齢医学研究所・遺伝子発現制御)


【目的】T細胞の活性化は免疫応答システムの確立において非常に重要であるが,未だ完全な理解,制御には至っていない.我々は超硫黄分子の主要産生酵素としてアミノアシルtRNA酵素の一つであるcysteinyl-tRNA synthetase(CARS)を同定し,CARSが産生する超硫黄分子が生体の硫黄代謝およびエネルギー代謝に深く関与していることを明らかにしてきた.(T細胞受容体)TCRシグナル活性化に伴う,CARS2発現低下および超硫黄分子の減少が観察されることから超硫黄分子が免疫機能の制御に寄与していることが示唆されている.本研究ではCARS2ヘテロ欠損マウスを用いてTCRシグナルにおける超硫黄分子の役割について解析を行った.
【方法・結果】 超硫黄分子が減少しているCARS2ヘテロ欠損マウスではナイーブCD4+T細胞においてTCRシグナルの活性化が促進され,内因性の超硫黄分子として最も豊富なGSSSGの添加により,TCRシグナル活性化は抑制された.この超硫黄分子によるTCRシグナル制御は,TCRシグナルの初期マーカーであるCD3鎖やZap70のリン酸化の変化を伴うことから,超硫黄分子はTCRシグナルの初期段階に作用している可能性が示唆され,プロテオーム解析を行ったところGSSSGがCD3ε鎖のCXXCモチーフと相互作用していることが確認された.これらの結果は超硫黄分子GSSSGがTCR/CD3複合体構造変化とシグナル伝達を調節することで免疫制御を行っていることを示すものである.
【方法・結果】本研究は,超硫黄分子の新たな機能としてTCRシグナル制御を介した免疫機能制御を明らかにするとともに,自己免疫疾患などの免疫応答破綻に起因する病態に対する,超硫黄分子を骨格とした創薬開発の可能性を見出した.