第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP28] 6. 生体防御-b. 適応免疫・ワクチン・その他の感染予防法

[ODP-183] ヒト抗破傷風毒素中和抗体開発とその作用機序

大坪 亮太1,2,伊藤 寿宏3,安居 輝人1,2,4 (1医薬基盤・健康・栄養研究所 感染症制御プロジェクト,2医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センター 免疫バイオロジクスプロジェクト,3医薬基盤・健康・栄養研究所 プロテオームリサーチプロジェクト,4富山県立大・工・医薬品工学科・統合オミックス医薬講座)


破傷風は破傷風神経毒(Tetanus Neurotoxin :TeNT)によって引き起こされる致命的な疾患である.TeNTは,ペプチターゼ活性を有した軽鎖(Lc)と重鎖(Hc)で構成されている.さらに,Hcに関しては,N末端側に細胞内移行ドメイン(Hn)とC末端側にレセプター結合ドメイン(Hc)の2つのドメインに分類される.これまでいくつかのTeNT中和抗体が報告されている.しかし,それらの抗体が,どのTeNTドメインを認識し,中和に関与しているのか作用機序が不明である.今回,我々は,どのTeNTドメインが中和活性抗体の抗原として機能するのかを明らかにするために,ヒト末梢血単核細胞からTeNT結合性ヒト抗体クローンを単離した.次に,これらの抗体にについて,TeNTの各ドメイン(Lc, Hn, Hcとこれら3種を混合したTeNT mix)のリコンビナントタンパク質を用いて結合性を評価し,ドメイン結合性により分類した.さらに,どのドメイン結合性抗体がTeNT中和活性に重要かを評価するために,ドメイン結合性ごとにリコンビナント抗体を作製し,マウスモデルを使って各抗体単独での中和能を評価した.その結果,Hn結合性抗体がTeNT毒性による致死を最も強く阻害した.さらに,HnとHc,TeNT mix結合性リコンビナント抗体を混合すると単独と比較して,中和効果が飛躍的に向上することが明らかとなった.