[ODP-188] Salmonella infected-tumor cells elicit anti-tumor immunity
宿主がん免疫応答を惹起するためには,がん細胞が抗原性に加え十分なアジュバント性を併せ持つことが必要となる.本研究では,Salmonellaの細胞内感染ががん細胞にアジュバント性を付与し,それにより感染がん細胞に由来する腫瘍抗原特異的な免疫応答が惹起されるかについて検討した.赤色蛍光タンパク質tdTomatoを発現するSalmonella typhimurium弱毒株(VNP-tdT)をマウスメラノーマ細胞株B16F10の培養系に接種し,一定時間後にカナマイシンを加えて細胞内未侵入菌を除去した.VNP-tdTに感染したB16F10細胞は顕著な膨化・空胞化を呈した.非感染細胞と比較して,VNP-tdT感染B16F10細胞はマウスマクロファージ株や骨髄由来樹状細胞に効率よく貪食された.共培養した貪食細胞は活性化し,共刺激分子CD86発現が亢進した.造腫瘍能をもつ非感染細胞とVNP-tdT感染細胞を混和してC57BL/6マウスに皮下接種したところ造腫瘍性が抑制された.更にこれらのマウスに非感染B16F10細胞のみの腫瘍形成試験を再度実施しても腫瘍形成には至らなかった.VNP-tdT感染B16F10細胞の接種を受けたマウスでは,メラノーマ抗原gp100特異的CD8+Tリンパ球(CTL)のin vivo増殖も確認された.これらの結果は,Salmonellaの腫瘍細胞内感染は,貪食細胞の活性化を促すのに十分なアジュバント性を誘起し,感染細胞に由来する内在性抗原に特異的なCTLを活性化して抗腫瘍免疫応答を賦活化すると考えられた.本研究を起点に細菌を介した新しい抗腫瘍免疫治療の可能性について論じたい.