[ODP-191] Effect of macrolides on the expression against pneumolysin of Streptococcus pneumoniae
【目的】マクロライド系薬に耐性を示す肺炎球菌の増加が社会的な問題となっている.一方,マクロライド系薬は,肺炎球菌のマクロライド耐性の有無に関わらず,菌体内毒素であるニューモリシンの放出を抑制することが報告されている.本研究では,ニューモリシン放出抑制能が高い抗菌薬をスクリーニングし,その分子メカニズムを解析した.
【方法】初期対数増殖期のマクロライド耐性肺炎球菌 NU4471株の培養培地に,エリスロマイシン,クラリスロマイシン,ロキシスロマイシンもしくはクリンダマイシン(各5 μg/mL)を添加して増殖定常期まで培養し,上清を採取した.各上清をヒツジ赤血球に添加し,溶血試験を行った.続いて,溶血活性を低下させた抗菌薬を選択し,培養上清中のニューモリシン放出量および同遺伝子転写に及ぼす影響について,それぞれwestern blotとreal-time PCRで解析した.さらに,マウス気管支に肺炎球菌NU4471株を感染させた後に,マクロライド系薬を経口投与し有効性を解析した.
【結果】いずれのマクロライド系薬添加群より採取した培養上清も,未添加群と比較し有意に溶血活性が低く,その作用はクラリスロマイシン添加群で顕著であった.クラリスロマイシンを添加した肺炎球菌では,ニューモリシン遺伝子の転写が抑制され,ニューモリシンの発現および放出量が減少した.NU4471株感染マウスにクラリスロマイシンを投与すると,肺胞中の生菌数に変化はなかったが,肺傷害が抑制されるとともに,血中酸素飽和度が改善した.
【考察と結論】クラリスロマイシンはニューモリシン発現を抑制することで,マクロライド耐性肺炎球菌感染症に対しても治療効果を有することが示唆された.