[ODP-199] Enterococcal V-ATPase inhibitor inhibits the growth of Clostridium perfringens
【目的】ウェルシュ菌(Clostridium perfringens )は食中毒の原因菌であり,ウェルシュ菌の増殖は腸内環境の悪化に繋がる.本研究室では腸球菌(Enterococcus hirae)由来のNa+輸送性V-ATPaseを研究し,V-ATPaseがアルカリ性条件下での腸球菌の生育に寄与することを示した.また,化合物ライブラリーからのスクリーニングにより,V-ATPaseを阻害することで腸球菌のアルカリ性条件下での生育を阻害する化合物(V-161)を同定した.乳酸菌などの共生細菌はV-ATPase遺伝子が見つからないが,病原性細菌の多くはV-ATPase遺伝子を保有していることがゲノム解析から明らかになった.よって,V-ATPase阻害剤はアルカリ性条件下でV-ATPaseを保有する病原性細菌のみを特異的に生育阻害する新規の抗菌薬になり得ることが期待される.本研究では,腸球菌と相同性の高いV-ATPase遺伝子を保有するウェルシュ菌についてV-161による生育阻害を調べた.
【方法】ウェルシュ菌の野生株(str.13 / ATCC13124)をpHの異なる培地で培養し,V-161による阻害能を検証した.また,V-ATPase欠損株(str.13)を作製し,V-161添加時の野生株の生育と比較した.
【結果・考察】V-161はウェルシュ菌str.13の生育をアルカリ性条件下でのみ阻害した.V-ATPase欠損株(str.13)でもアルカリ性条件下で同様に生育が悪化したことから,ウェルシュ菌(str.13)由来のV-ATPaseはアルカリ性条件下での生育に重要な役割を担っていることが示唆された.一方,V-161はウェルシュ菌ATCC13124株の生育を酸性条件下でのみ阻害した.このことから同じウェルシュ菌でも株の違いによってV-ATPaseが機能するpH範囲が異なることが示唆された.