The 95th Annual Meeting of Japanese Society for Bacteriology

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[ODP31] 7. Antimicrobial agents and resistance -b. Antimicrobial resistance

[ODP-204] Biological significance of β-lactam carbothioic S-acids mediated by cysteine hydropersulfide

Katsuhiko Ono1, Tianli Zhang1, Hiroyasu Tsutsuki1, Takaaki Akaike2, Tomohiro Sawa1 (1Dept. Microbiol., Grad. Sch. Med. Sci., Kumamoto Univ., 2Dept. Envir. Med. Mol. Toxicol., Tohoku Univ., Grad. Sch. Med.)


【目的】硫化水素 (H2S)が抗菌剤耐性に寄与することが報告されている.しかしそれらの詳しい機構は未だ明らかになっていない.近年,システインに過剰にイオウが付加したシステインパースルフィド(CysS-SH)が生体内で産生されることが報告された.CysS-SHは酸化型システインであるシスチンとH2Sの反応により生成されることから,H2Sの抗菌剤耐性への寄与はCysS-SHを介したものであることが考えられた.そこで本研究ではCysS-SHの細菌における抗菌剤耐性に与える影響を検討することで,新しい薬剤耐性化機構の解明を目的とした.
【方法】CysS-SHとβラクタム系抗生物質の反応生成物の解析には,高速液体クロマトグラフィーと質量分析計を用いた.またそれら反応産物の抗菌活性はディスク法で検定した.細菌や細菌培養上清からの反応産物の解析には誘導体化後,質量分析計を用いて定量した.
【結果】シスチンとH2Sから生成されるCysS-SHとβラクタム系剤を反応させることで,βラクタム環の開環を伴うカルボチオ酸体(BL-COSH)を形成することを見出した.BL-COSHはCysS-SH特異的に形成され,H2Sやシスチンのみでは形成されない.さらにBL-COSHは抗菌活性を完全に失っていることが分かった.さらに細菌からのBL-COSHの検出を試みたところ,グラム陽性,陰性菌のいずれにおいても,β-lactam系抗菌剤を処理したサンプルの細菌内,培養上清からBL-COSHを検出した.
【考察】細菌のCysS-SHはβ-lactam系抗菌剤と反応することで,抗菌活性を失ったBL-COSHを形成,さらに細胞外へ排出することで,細菌の薬剤耐性に寄与していることが考えられる.