第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP31] 7. 抗菌性物質・薬剤耐性-b. 薬剤耐性

[ODP-210] ヒト患者由来Campylobacter jejuniの薬剤感受性とレジストーム解析

荒井 大樹1森田 大地1,2,磯部 順子3,前西 絵美3,熊谷 孝則1,2,丸山 史人4,黒田 照夫1,2 (1広島大・薬,2広島大・院・医系科学,3富山衛研,4広島大・学術・社会連携室・環境遺伝生態学)


Campylobacter jejuniは主要な細菌性食中毒の原因菌であり,鶏肉などの肉類の摂取によってカンピロバクター腸炎を引き起こす.カンピロバクター腸炎に対する治療薬の一つであるニューキノロン(NQ)系抗菌薬への耐性株が近年増加し問題となっている.またテトラサイクリン(TC)系抗菌薬への耐性も増加しており,畜産でのTC使用による影響が考えられる.ヒト患者由来のC. jejuniの薬剤耐性の解析は,治療面のみならず畜産による選択圧がC. jejuniの耐性に与える影響を把握する上で重要である.2016年から2020年に富山県衛生研究所において分離された116株のC. jejuniに対する薬剤感受性試験に加え,比較ゲノム解析を実施し,C. jejuniの系統および耐性因子を推定した.主な耐性はNQ系抗菌薬(32%),TC系抗菌薬(27%)が見られる一方,マクロライド系抗菌薬に対する耐性は見られなかった.またTC耐性はこれまでの報告と同様に,主にプラスミドによるものであったが,一部のプラスミドではTC耐性に加え,アミノグリコシド系抗菌薬に対する耐性遺伝子などが存在していた.系統解析では世界的な流行型のClonal Complex(CC)型に分類されるものが多い一方で,その他のCC型に分類されるものも少数みられた.また,Penner血清型別法では54%が判別不能であったが,解析されたゲノム情報より血清型関与抗原の合成遺伝子に対するPCR法によって判別が可能と予想され,系統解析の結果とも相関するものであった.