[ODP-213/W10-6] Antipseudomonl activity of polycarboxylated aminopenicillin derivatives
【目的】緑膿菌は病原性のグラム陰性菌であり,院内感染や日和見感染を起こす.特に,多くの抗菌剤に抵抗性を持つ「多剤耐性緑膿菌」による感染症は,有効な抗菌薬が少なく治療に難渋する.本研究では,緑膿菌感染症に対する新たな薬剤の開発を目的とし,抗緑膿菌活性の高いアミノペニシリンポリカルボキシル化誘導体を合成した.
【方法】アモキシシリン(Amox)のアミノ基に修飾を行いカルボキシル基の数が異なる種々の誘導体を得た.緑膿菌標準株に対する最小発育濃度(MIC)を評価し,diethylenetriaminepentaacetic acid(DTPA)を付加した DTPA-Amox に着目した.緑膿菌臨床分離株に対するDTPA-Amox の抗菌活性は,タゾバクタム存在下,ピペラシリン(Pip)との比較を行った.さらに緑膿菌感染モデルを樹立し,DTPA-Amox の効果を評価した.
【結果】DTPA-Amoxは緑膿菌標準株に対する高い抗菌活性を示した.さらに,DTPA-Amoxは多剤耐性を示す複数の臨床分離株に対してもPipより有効であった.また,緑膿菌感染マウスにDTPA-Amoxを投与することで,優位な治療効果が認められた.
【考察】DTPA-Amoxはカルボキシペニシリン(カルベニシリンなど)とウレイドペニシリン(Pipなど)のハイブリッド構造をAmoxに付加したことで抗緑膿菌活性を獲得した.臨床分離株を用いた検討から,メタロβ-ラクタマーゼ(MBL)を発現する菌株に対しても DTPA-Amox が抗菌作用を示すことが分かった.以上より,Amoxにポリカルボキシル基を付加することで,MBLに対して耐性を獲得することが示唆された.今後,様々なポリカルボキシル構造を導入した新しいβ-ラクタム剤の開発とMBL発現菌に対する抗菌作用の検討が望まれる.