第95回日本細菌学会総会

講演情報

総会長企画シンポジウム

[PS2] 総会長企画シンポジウム2
日本細菌学会が目指す産官学連携の戦略とイノベーションの創出

2022年3月31日(木) 09:15 〜 11:45 チャンネル2

コンビーナー:菊池 賢(東京女子医科大学),田村 弘志(日本バイオベンチャー推進協会・LPSコンサルティング事務所)

[PS2-3] 糖鎖を基盤としたナノバイオテクノロジー

隅田 泰生1,2 (1鹿児島大・院理工・化学生命,2(株)スディックスバイオテック)

免疫に必須な細胞接着は,糖鎖と蛋白質の特異的結合が引き金に起こること,細胞の癌化に伴い出現する「癌関連糖鎖抗原」は癌マーカーとなり得ること,細胞表層の糖鎖はウイルスには細胞に吸着するための最初のレセプターとして使用され,その感染を仲介することなど,糖鎖は生体内で多彩な機能を示し,生命現象に不可欠な役割を演じる.我々はこれらの糖鎖に基づく相互作用を分子レベルで解析するために,糖鎖を固定化したバイオデバイス「シュガーチップ」および「糖鎖固定化金ナノ粒子(SGNP)」を開発した.前者は表面プラズモン共鳴を利用した測定に使用することによって,後者は目視による観測でも,ともに糖鎖が結合する蛋白質やウイルスなどの対象物との相互作用を無標識で迅速・簡便に観測・定量できる.またSGNPはレクチンの1ステップ精製などへ応用,さらにリアルタイムPCRを組み合わせて高精度のウイルスのPCR検査診断法を確立し,新型コロナやインフルエンザの体外診断用医薬品キットを上市することが出来た.
本講演では,上記に加えて,糖鎖と自然免疫受容体リガンドを固定化した金ナノ粒子のワクチンへの応用,ファイバー型シュガーチップを用いた癌細胞表層糖鎖に対する一本鎖抗体の調製と,その抗体を用いた癌免疫細胞療法,さらにベンチャー起業についてもお話したい.