[S11-1] Interactions between botulinum toxin complex and mucin in the host small intestine
ボツリヌス毒素複合体はボツリヌス菌などから産生されるタンパク質毒素であり,食餌性ボツリヌス症を引き起こす.本毒素は血清型A~Gに分類され,主にA,B,E およびF型がヒトに中毒を引き起こす.毒素複合体(L-PTC)は神経毒素であるBoNTと無毒成分タンパク質であるNTNHA,HAから構成される.HAは糖鎖結合活性やE-cadherin阻害活性を有し,毒素の腸管吸収に重要な分子である.我々はこれまでに,A型ボツリヌス菌62A株が産生する毒素複合体(L-PTC/A-62A)は,小腸に存在するパイエル板のM細胞から吸収されることを報告した(Matsumura, et al. 2015).一方で,B型菌Okra株が産生する毒素複合体(L-PTC/B-Okra)は,L-PTC/A-62Aと比較して顕著に高い経口毒性を示すことが知られている.本研究は,L-PTC/B-Okra(強毒型)がL-PTC/A-62Aと比較して高い経口毒性を示す分子機構を解明することを目的とする.マウス腸管結紮ループを用いた解析から,L-PTC/A-62AはM細胞から特異的に吸収されるのに対し,L-PTC/B-Okraは吸収上皮細胞からも吸収されることが明らかになった.in vivoおよびin vitroの実験から,L-PTC/A-62Aはムチン層にトラップされることにより絨毛上皮に結合しないが,L-PTC/B-Okraはムチン層を透過して吸収上皮細胞に結合することを見出した.このムチン透過性の違いについて構造生物学および生化学的アプローチから行っている研究について報告する.