[S11-2] Effects of subtilase cytotoxin from Shiga-toxigenic Escherichia coli on host defense system
Subtilase cytotoxin(SubAB)は,オーストラリアにおける集団食中毒の原因となった志賀毒素(Stx)産生性大腸菌(STEC)O113株から同定されたAB5型毒素である.SubABは小胞体(ER)シャペロンタンパク質であるBiPを切断し,宿主細胞にERストレス性の細胞毒性を示す.本邦においては,散発的ではあるがStxとSubABを産生するSTECが毎年のように同定され,重症患者から分離された例もある.SubABはマウスに対して腸管出血と致死を誘導することからStxと同様に強毒性の腸管毒素であると考えられる.しかしながらStxとの類似性から,感染病態におけるSubABの役割については不明な点が多い.我々は,SubABの毒性発現機構を解析するなかで,SubABがマクロファージのLPSに対する自然免疫応答である一酸化窒素(NO)合成酵素の発現を阻害することで,NOの産生を低下させることを見出した.SubABによるNO産生低下はマクロファージ内に取り込まれた大腸菌の生存を亢進した.この発見をもとに,我々はSubABがSTECの生存に関わる因子である可能性に着目し,宿主防御機構に及ぼすSubABの影響を解析している.特にサイトカインの一種であるIL-1βの産生に及ぼすSubABの影響を調べるために,マウス感染モデルを樹立し,感染病態におけるSubABの機能解明に取り組んできた.一方,SubABの毒素としての病原性発現におけるNOの影響や酸化還元(レドックス)調節機構の関与はこれまで不明であった.本演題では,SubABの毒性発現にNOがどのような影響を及ぼすか,SubABによるNO産生低下が本毒素の病原性発現に関与するかについて,これまで得られた知見を紹介したい.